伯爵の花嫁の無垢なあやまち／ロレイン・ヒース

伯爵の花嫁の無垢なあやまち (ラズベリーブックス)

　ウエストクリフ伯爵と聞くと、当方の頭に浮かぶ人物は、リサ・クレイパスのロマンス小説にしばしば登場する堅物の貴族だ。ひょっとしてウエストクリフ伯爵というのは、イギリスではよく知られた称号なのかもしれない。
　まだ少女だったときにウエストクリフ伯爵クレアは、なんとか初夜を延ばそうと悪戯を企てたことから、夫を激怒させる。それから三年の別居ののち、妹ベスの便宜を図ってもらうため、クレアは夫との再会を決める。それから夫婦の間に本当の愛が芽生えるとも知らずに。
　イギリスの上流階級を舞台にしたロレイン・ヒースのロマンス小説である。ロレイン・ヒースは多彩な物語世界を持つロマンス小説家だが、テキサスを舞台にした『あなたのそばで見る夢は』や『愛を刻んでほしい』などの繊細で哀切きわまりない作品が、個性的で、ことに印象に残る。
　イギリスの上流階級を舞台にした彼女の作品は読んでいて決してつまらなくはないが、際立った個性や情感を感じさせない。ヒーローとヒロインは正しく結ばれ、お邪魔虫はいとたやすく粉砕される。前述のテキサスものでは脇役であっても、これほど無神経に扱われることはないのに。
　ありきたりの面白さを持つ一冊。
　

あなたのそばで見る夢は (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション ヒ 1-2)

愛を刻んでほしい (二見文庫 ヒ 1-1 ザ・ミステリ・コレクション)