FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

無垢な花に約束して/エリザベス・ホイト

無垢な花に約束して (ライムブックス)

無垢な花に約束して (ライムブックス)

 『聖女は罪深き夜に』に続く、<メイデン通り>シリーズ第二作。
 ヒストリカルロマンスに登場する貴族令嬢の主人公と言えば、大抵時代が貴族の未婚女性に課した桎梏を重苦しく感じている活発なヒロインが多いが、この『無垢な花に約束して』のヒロイン、ヘロは違う。
 自分が公爵家の娘であることをいっときたりも忘れたことはなく、家族の要請通り、婚約者のマンダビル侯爵トマスと結婚しなければならない重要性をよく理解している。こちこちの堅物だが、彼女とて「宿命の男」グリフィン……なんと婚約者の弟で、なにかと悪名の高い男だ……と出会ったときから、変わる。実はマンダビル侯爵の方でも、「宿命の女」たる悪名高い未亡人ラビニアが忘れられず、彼の前では自分が侯爵であることさえ忘れ、平凡な男になり下がってしまうのだが。
 家族が決めた完璧な男性と、完璧な結婚をすること。それが公爵令嬢ヘロの責務であり、願いでもあった。だが侯爵の弟グリフィンと出会ったときから、ヘロの運命は大きく変わっていく。
 むろんグリフィンの運命も。実はマンダビル侯爵家にはお金がなかった。だから、グリフィンは一家を養うため、ジンの醸造に手を出していた。心身の健康を大きく損ない、多くの人々を苦しめており、そのため社会問題にさえなっている酒ジンの。
 トマスのヘロに対するある行為がいかがなものかと思われるが、そこを除けば相変わらず面白かった。別名義ジュリア・ハーパーで書かれているコンテンポラリー(現代を舞台にしたロマンス小説)も読んでみたいものである。

聖女は罪深き夜に (ライムブックス)

聖女は罪深き夜に (ライムブックス)