FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

星を撃ち落とす/友桐夏

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

 強引にまとめてしまうが、生々しい人間の感情やその感情が引き起こしたダークな出来事を描きつつも、どこか現実離れしており、古い少女小説のような甘美さをたたえた作家の系譜として「佐々木丸美恩田陸」の系譜があると思う。そして友桐夏も、その延長線上にいる。
 第二章「廃園に臨む館への招待」での姿を現さない令嬢と、彼女を巡る事件の真相について、登場人物達が推理を巡らせる様子など、恩田陸黒と茶の幻想』の四人の男女のやり取りをふと連想させた。
 彼女のデビュー作『白い花の舞い散る時間』は四人の少女と、その心理戦を描いた小説だったが、この『星を撃ち落とす』も同じく四人の少女が現れ、心理戦を繰り広げる。
 優等生でしっかりものの水瀬鮎子、明晰な頭脳を持つが悪評の絶えない篠原美雲、気弱で依存心が強い長岡茉歩、四人の中でもっとも「語り手」の位置に近く、他の三人に比べれば個性が乏しく見える津上有騎。
 この四人の中で、
 一番傷付いたのは誰だ。
 一番邪悪な心を持つのは誰だ。
 タイトルの『星を撃ち落とす』とは、四人の中の黒幕めいた存在が抱いていた暗い願いだった。その意味と、それまで読者に隠されていたある事実が分かった瞬間、膝を打った。
 傑作。

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

↑多分、途中で皆さんびっくりするであろう、彼女の処女作。
黒と茶の幻想 (Mephisto club)

黒と茶の幻想 (Mephisto club)

↑この頃の恩田陸は凄かった。