愛の歌は海を越えて/マデリン・ハンター
- 作者: マデリン・ハンター,松井里弥
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2012/04/10
- メディア: 文庫
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マデリン・ハンターは、ロマンス作家にしては珍しく硬質の文体を持ち、さらに物語全体に独特の雰囲気が漂っている。この二つが合わさると、登場人物への感情移入がしにくいときもある。さらに作品自体、出来不出来が結構激しい。
良くも悪くも、没個性の作家ではない。出来のいい作品に当たったときには、他の翻訳ロマンス小説とはまったく違った口当たりの作品が楽しめる。
この『愛の歌は海を越えて』は「当たり」にして、マデリン・ハンターとしては甘美な印象が強い。祖父の遺産を相続するため、イギリスにやってきたアメリカ娘、ビアンカの夢はオペラ歌手になること。しかし、あと一年間後見人の庇護を受けなければ、財産は貰えない。そのうえ、後見人のラクレア子爵ヴァージルはこちこちの堅物で、ビアンカの夢をまるで理解しなかった。そして、ビアンカはまったく預かり知らぬことだったが、ヴァージルはビアンカと、自分の弟ダンテとの婚姻を望んでいた。
しかし、正反対の性格を持つ二人はやがて惹かれ合うようになる。
ダンテがややあて馬ぎみに書かれているのがなんだが、ぎりぎり嫌な感じを与えない(次の作品のヒーローだから、救われるし)
この『愛の歌は海を越えて』は、『氷の後見人と恋に落ちて』に続く゛ハムステッド決闘団゛の二作目である。ややこしい話だが、このシリーズのスピンオフ『罪つくりな遺産』と『罪つくりな淑女』の方が、先に竹書房ラズベリーブックスから出版されている。
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