FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

青銅の騎士/アレクサンドル・プーシキン

青銅の騎士 (ロシア名作ライブラリー)

青銅の騎士 (ロシア名作ライブラリー)

 これまで読んだことのない古典の一作。一篇の叙事詩である。
 詩について語る前に、いくらか説明しなければならないのだが、タイトルの「青銅の騎士」とは、ロシア、サンクトペテルブルクのネヴァ川左岸に立つピョートル大帝の騎馬像のことである。のちに、やはり大帝と呼ばれるエカチェリーナ女帝が作らせた。
 サンクトペテルブルクピョートル大帝が建都を命じたものだが、当時のその土地は荒廃した沼地であり、建造作業は困難を極め、そのあまりの過酷さに、多くの人命が失われた。
 優美繊細な筆致で描かれる、残酷な詩の内容と言えば……
 十一月の晩秋、エヴゲーニイは厳しい嵐に苦しみながら、愛するパラーシャの家庭を営むことを夢見る。しかし洪水は愛する女を家ごと流してしまった。狂気に陥った男は、都市の創造主ピョートル大帝(の像)と対決することにするが、この大帝の像は動き出し、どこまでも男を追っていく。あたかも皇帝への不遜を許さぬように。やがて、男は冷たい亡骸へと変わる。
 はたして、青銅の騎士が動き出したのは、亡き大帝が銅像と化しても力を有していたせいか、あるいは狂った男の妄想なのか。
 いわゆる「人形怪談」としても読めるし、現実が受け入れられなかったゆえ狂気に陥った男の悲劇とも読める。
 余談だが、プーシキンのこの詩が有名になったため、ピョートル大帝の騎馬像もそのまま「青銅の騎士」と呼ばれているそうだ。また「青銅の騎士」が無事である限りは、サンクトペテルブルクは安泰であるという言い伝えがあるという。
 さらに余談だが、当方はこの「青銅の騎士」が収録されている書籍をなかなか見つけることができず、筑摩書房『世界文學大系26 プーシキン レールモントフ』でようやく読むことができた。

青銅の騎士のWikipediaはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E9%8A%85%E3%81%AE%E9%A8%8E%E5%A3%AB