愛は果てしなく／ダフネ・デュ・モーリア

デュ・モーリア作品集〈第5〉燃える海 (1966年)

世界大ロマン全集〈第1-2巻〉 鉄仮面、情炎の海(1956年)

　この作品も、読んだことのない古典の一作。東京創元社から『世界大ロマン全集』の二巻目として出版されたときは『情炎の海』、三笠書房からはこの『愛は果てしなく』と『燃える海』、評論社からは『若き人妻の恋』、ミッチェル・ライゼン監督が映画化したときは『世界大ロマン全集』と同じく『情炎の海』、と実に様々なタイトルで発表されている。これは原題が“Frenchman's Creek”、作中の言葉で言えば「フランス人の入江」で、あまり華やかな題名ではないせいかと思われる。
　現在のヒストリカルロマンスのしばしば見られる、「ヒーローの職業は海賊」ものの源流の一つであろう一作。富も地位もあったが、日々の倦怠感に負けて海賊になったフランス人の男が、日々の倦怠感に嫌気がさしたイギリスの貴族女性と恋に落ち、二人が「愛は果てしなく」とばかりに旅立つ物語である。
　お話としては……普通の他愛のないラブロマンスである。女史の他の傑作、例えば『レベッカ』のような長編ロマンや、ぴりっとした短編群と比べても、やや印象が薄い。

鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

破局 (異色作家短篇集)

↑デュ・モーリアの傑作短編群