リヴァイアサン/スコット・ウエスターフェルド
リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 作者: スコット・ウエスターフェルド,小林美幸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/12/07
- メディア: 新書
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文字の数のせいですべて入りきらなかったが、正式なタイトルは『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』である。
当方は、冒険小説やスパイ小説と並び、SF小説に疎い人間である。国内のものであれ、翻訳ものであれ、代表作をほんの少しかじったことがあるぐらいだ(具体的に言えば、筒井康隆の火田七瀬シリーズや、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』を昔読んだことがあるぐらい)。
この『リヴァイアサン』を手に取ったときも、あらすじを読みながら「スチームパンクってなんだろう」、「ローカス賞って有名な賞なんだろうか」などと思い、「私に読んで分かるだろうか?」と心配になったが、とても楽しめた。
一九一四年、ヨーロッパ。立場と異なる少年アレックと少女デリン……ハプスブルク家の一員だが、母親が皇族の出身ではなく、しかも父母ともに暗殺されたために難しい立場に置かれているアレックと、空を飛ぶことに憧れたあげく、男装して英国海軍航空隊に入隊したデリンの出会いと友情を描いた、痛ましくも、瑞々しい青春小説である。二人は単に国籍や身分の違いのみならず、思想の違いもある。ドイツら<クランカー>は機械工学を発達させ、英国ら<ダーウィニスト>は遺伝子操作した動物を生活や戦争の基盤としているのだから。
臣下と逃亡中のアレックが、巨大飛行船リヴァイアサンでデリンと出会い、そしてこののちの歴史は大きく動いていく……ようだ。というのもこの作品は、三作で完結するシリーズものの第一巻で、しかもアレックとデリンが作中で出会うまでに結構ページ数があるからだ。二人の本格的な冒険が始まるのは、おそらくこれからなのだろう。ノラ・バーロウ博士がなにを考えているか、なにをしでかすに興味がある。
良かった!