あの丘の向こうに/スーザン・エリザベス・フィリップス
- 作者: スーザン・E・フィリップス,宮崎槇
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2011/12/19
- メディア: 文庫
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現代アメリカ屈指の……いや、国を越え、現代を代表するロマンス作家の一人、スーザン・エリザベス・フィリップス。ヒストリカルも現代ものの上手な彼女だが、作品の数が多いだけあって、当たり外れも大きい。
『あの丘の向こうに』は、昔からのフィリップスのファンならば、にやりとしながら大満足し、初めて彼女の作品に触れる読者にとってはなかなか面白いと受け取られることだろう。
なぜこんなことを書くかと言えば、フィリップスがどれほど意識したか分からないが、従来からのファンへのサービスの部分がとても多いからである。これまでの彼女の作品の登場人物のそののちの姿や、その子供などがたくさん出てくる。だから、フィリップスの昔からのファンにとっては、「あの作品に出てきた**がこんなところで再登場を!」と喜べるだろうが、知らない人にとっては、「誰だろう、この人は」という感じになると思われる。
公平を期して言っておくが、過去の作品の登場人物がわんさか出てくるところを除いても、ロマンス小説として楽しめた。
だらしのない大金持ちのヒロインが一夜にして貧乏となってしまい、生まれて初めて自活することとなり、働いて周囲の人々と触れ合ううち、人間として成長し、ヒーローとの恋に落ちていく(これは現代を舞台にしているものの『麗しのファンシー・レディ』そのままである。そしてヒロイン、フランセスカはヒーローの母親として登場する)。
よくあるストーリーと言えばストリーだが、ユーモアとロマンティシズムが均等に漂っており、ガッツのあるヒロインは可愛い。万能の才能を有し、潰れかけた町を救ったため、町の人々からイエス・キリスト扱いされているヒーローが、ヒロインに本音を語るシーンも可愛い。
総じてなかなか面白かった。ファンサービス抜きにとしても傑作。