破壊者/ミネット・ウォルターズ
- 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/12/21
- メディア: 文庫
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現在手元に出典が明かになるような書物がないので、ちょっと断言しにくいのだが、確かジェーン・オースティンの作品について書かれたもので、こんな言葉があった。「ジェーン・オースティンの作品は、あらすじだけ聞くととてもつまらないように思えるが、実際に読んでみるととても面白い」、と。
このミネット・ウォルターズ『破壊者』にも同じことが言える。波のあいまを漂っていた女性の死体の指は折られていた。おそらくは陵辱されてから海に投げ込まれたらしい。そして死んだ女は妊娠しており、彼女の三歳の娘は海辺の町で迷子として保護されていた。
と書くと、実に陰々滅々としてミステリのように感じられるが、読んでみると実に面白い。ミネット・ウォルターズの筆致は必要以上に感傷的でもなければ冷たくもなく、被害者女性の人物像と彼女を取り巻く人間関係を、山のような証言から描き出していく。杉江松恋の解説によれば、ミネット・ウォルターズはしばしば好きな作家としてパトリシア・ハイスミスを挙げるそうだが、ウォルターズの作品は人間観察はハイスミスと同じぐらい鋭いものの、人を見る目は遙かに温かい。そしてフーダニットの面白さに満ちている。
目撃者が見たものと、刑事達の捜査と、刑事達の作成したメモと、専門家の報告書と、そして関係者たちの証言でできあがった作品で、そこから導き出される結論は酷く、そして見事。
もっと、こういった類のミステリが読みたい。さらに翻訳されろ、ミネット・ウォルターズ、さらに翻訳されろ、英国ミステリ。
- 作者: ミネットウォルターズ,Minette Walters,成川裕子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/07
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- 作者: ミネットウォルターズ,Minette Walters,成川裕子
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