FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

特捜部Q 檻の中の女/ユッシ・エーズラ・オールスン

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

 生まれて初めて読むデンマーク産のミステリである。
 ある事件に巻き込まれたのち、部下の一人を死なせ、他の一人をほとんど植物人間のような状態にしてしまったコペンハーゲン警察の警部補カール・マーク。
 ショックから立ち直れぬまま、彼はいきなりコペンハーゲン警察の新部署、未解決の重大事件を専門に扱う、その名前も「特捜部Q」の統率を任される。ちなみに部下は正体不明のシリア系のアサドという男一人のみだった。
 彼らは、今では周囲から認識されている、女性議員ミレーデ・ルンゴーの失踪事件を追う。
 変人変人としきりに書かれているが、アサドは正体不明ではあるものの、それほど変人ではないような気がする。
 物語は現在のカール&アサドのコンビの捜査と、時間を数年遡り、ミレーデの子供時代に起った出来事と、政治家として名を上げたのち、ある事件に巻き込まれた様子を交互に描く。
 ややネタを割ってしまうと、ミレーデは自己の意志で失踪したわけではなく、なにものかによって誘拐され、監禁されていたのだ。ひどい拷問や、性的暴力を受けたわけではなかったが、それでも幽閉された生活はつらいものだった。犯人の見当はさっぱりつかず、彼らの目的さえ分からない。だがミレーデは障害ある弟ウフェを案じながら、強い意志と理性でこの異常な生活に耐えていた。それも、何年もの間。
 カール&マークの捜査のパートより、サイコサスペンス風のミレーデの章の方に読み応えがある。ミレーデの章を読んでいけば、犯人の正体とその目的に察しがつくが、それでもラストまで目が離せない。
 本書は『特捜部Q』シリーズの第一作目。すでに第二作『特捜部Q キジ殺し』が出版されている。

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)