FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ボディ・メッセージ/安萬純一

ボディ・メッセージ

ボディ・メッセージ

 これは……登場人物一覧表、もしくは探偵一覧表が欲しかった。日本人探偵、被砥功児(ビート・コージ)を初め、西村京太郎ではないが『名探偵が多すぎる』と言いたくなるほど、たくさんの探偵が登場する。
 大胆なトリックがある作品で、久々に華やかな本格ミステリを読んだ印象だ。
ちなみに、あるダイイング・メッセージ(被害者は亡くなっていないのだが)を見たとき、脳裏に浮かべた勘違いは山田正紀とまったく同じだった。おそらくそういった人は多いのではと思いたい。
 アメリカ、ベックフォードにあるディー・デクスター探偵社に奇妙な依頼が入った。探偵二人である屋敷に必ず二人で行き、泊まってほしい。それだけで、千ドルの報酬を払う。実際に金銭は振り込まれ、二人の探偵スタンリーとケンウッドは怪奇映画の舞台を思わせる壮麗な屋敷へと足を踏み込んだ。何人かの女と顔を合わせたが、まったく事情は説明されなかった。一人だけ、ケンウッドが知っている女がいた。人探しの達人だというベテランの女探偵フラン。しかし、彼女もまたなにも語らなかった。
 二人は酒を飲んで、眠りこんでしまう。翌朝、見たものは血の海と、四体の切断死体だった。探偵事務所と警察に連絡、再び屋敷に舞い戻ったとき、刑事達と彼らの前からは血の海ごと死体はすべて消失しており、うまく話すことのできない大男のみが残されていた。
 探偵たちは、屋敷の住人の過去を追う。そこには大きな秘密と、過去の惨劇が隠されていた。
 第二十回鮎川哲也賞受賞作。
 うん、大満足。ミステリゆえ細かなネタバレができないのだが、核となる秘密が、探偵達と読者にもたらす「不思議さ」とそののちの「納得感」がいい。
 すでに二作目である『ガラスのターゲット』が出版されているので、そちらも読んでみたい。また選評を呼んで同時受賞作、月原渉『太陽が死んだ夜』にも関心が湧いた。

ガラスのターゲット

ガラスのターゲット

太陽が死んだ夜

太陽が死んだ夜

名探偵が多すぎる (講談社文庫 に 1-5)

名探偵が多すぎる (講談社文庫 に 1-5)