FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

三本の緑の小壜/D・M・ディヴァイン

三本の緑の小壜 (創元推理文庫)

三本の緑の小壜 (創元推理文庫)

 『悪魔はすぐそこに』、『ウォリス家の殺人』、『災厄の紳士』などこれまでの未訳のディヴァインに比べ、やや小粒な印象を受ける。「被害者達が殺人事件を知りつつも、真犯人に対してつい油断してしまった理由」については、ディヴァインが生きていた時代(一九二〇年〜一九八〇年のイギリス)より、現代日本の少女の方が、おそらくは察しがつきやすいのでは思われる、ミステリ小説の中でもこの理由は出てくるし、現実にこういった事件も起きているのだから。
 思春期に足を踏み入れた一三歳の少女達。彼女達にも様々な個性があり、事情があった。英国北部の町で、海水浴から徒歩で帰宅途中だったジャニスという少女が行方知れずになり、のちにゴルフ場で全裸死体として発見された。容疑者とされた若い医師は自殺とおぼしき転落死を遂げる。
 医師の弟が、調査を始めるものの、少女殺しは終わらなかった。
 「被害者達が殺人事件を知りつつも、真犯人に対してつい油断してしまった理由」については見当がつくため、容疑者がかなり絞られてくる。そこから、となると少し悩んだ。探偵役の犯人の特定も、犯人のヘマに基づいているため、やや危うい。
 『ウォリス家の殺人』にも見られる「長いときを経るにつれ、蓄積されてしまった歪んだなにか」と、良くも悪くも生々しい女性(少女含む)を書かせるとうまいディヴァイン。創元推理文庫から翻訳される゛Sunk Without Trace゛に期待。

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

ウォリス家の殺人 (創元推理文庫)

ウォリス家の殺人 (創元推理文庫)

災厄の紳士 (創元推理文庫)

災厄の紳士 (創元推理文庫)