人面屋敷の惨劇/石持浅海
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/08/04
- メディア: 新書
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いい話っぽくまとめているが、ちっともいい話ではない。いつもの石持浅海である。
石持浅海の館だが、「閉ざされた、一定上の広さを持つ空間の中での、限定された容疑者の中の殺人事件」では、そもそも初期の『月の扉』(ハイジャックされた飛行機)から色々あるわけで、これだけが「屋敷」とタイトルについているのは……ムードを出すためなんだろうか。もっとも館の主人の目的を考えれば、もっと何階も階数がある、ビルディングの方が良かったのではないかと思われる。
ちなみにこの『人面屋敷の惨劇』は、住人の一人が「他に誰が住んでいるか本当に分からない」と口にしているため、容疑者は限定されていない。
十年から、十二年前に起った東京都西部で起こった幼児連続失踪事件。子や兄弟を失った被害者達は、一人の男に目をつけた。通称「人面屋敷」に住まう土佐という資産家だ。
「人面屋敷」に乗り込んでいった彼らの一人は、土佐と会話をしているうち、激情のあまり、土佐を殺害してしまう。そこに現れたのは、一人の美少女だった。彼女は土佐の奇怪な思想に洗脳されている。土佐を殺した人間たちを憎む美少女と丁々発止を繰り返しながら、なおも館の中に家族を探す親たち。そして、その被害者家族の一人が殺された。
犯人は、誰か。彼ら(読者)の前にまだ現れていない土佐の信奉者か、あるいは被害者家族の中の誰なのか。
犯人の正体と、普通の人間はにはなかなかついていくことのできない、彼らの思考回路とそこからくる言動を含め、いつもの石持浅海である。