FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

仮面の伯爵とワルツを/ロナ・シャロン

仮面の伯爵とワルツを (ライムブックス)

仮面の伯爵とワルツを (ライムブックス)

 表紙を見るとセクシー&ゴージャスなロマンスを連想するかもしれないが、内容は結構シリアスな物語である。
 十九世紀、ロンドン。貴族の娘イザベルは、兄ウィリアムの親友、一回り年上のアシュビーに憧れていた。当時はイザベルの幼さと年齢差ゆえ、二人の関係はさして発展しなかった。
 やがて戦争が起き、ウィリアムとアシュビーは出兵したが、生きて戻ってきたのはアシュビー一人だった。アシュビーは美貌と陽気で社交的な性格を失い、傷を負った顔を常に仮面で覆い、邸宅に引きこもった生活を送っていた。
 イザベルもすでに少女ではなくなっていた。戦争で一家の大黒柱を失った女性達に、仕事を与えたり、住む場所を探したりして、生活を支援する団体を立ち上げていた。ある日、イザベルは思い切ってアシュビーを訪ねる。アシュビーは団体を支援してくれたものの、その態度はどこか冷たいものだった。
 実はウィリアムの死に絡み、アシュビーはイザベルに負い目があった。そのため、二人は相愛の仲であるにも関わらず、なかなか結ばれることができなかった。
 傑作。作者はイスラエルで会社員として働いており、小説家になるため一時期ニューヨークへと飛び出したが、現在は再びイスラエルで、今度は執筆活動にいそしんでいるという。
 初めて読む作家で、しかも大変面白かったので、「他の著作が邦訳されているかな」と調べたところ、同じく原書房ライムブックス『海賊の王子にとらわれて』という作品が出版されていることを知る。しかし、「ヒーローの職業:海賊」がいまいち好みではないので当方は悩んでいる。同じ理由で、リサ・クレイパスの『ただ一人のあなたへ』も読んでないのだ。

海賊の王子にとらわれて (ライムブックス)

海賊の王子にとらわれて (ライムブックス)