闇の王国／リチャード・マシスン

闇の王国 (ハヤカワ文庫NV)

　おお……これは、つまらない。彼本人の若かりし頃を投影した主人公であろうが、これが巨匠マシスンの手によるものかと思うと、いささか哀しくなってくるほどだ。『アースバウンド　地縛霊』はホラー小説と官能小説のミックスされたもので、こちら『闇の王国』はファンタジー小説と官能小説のミックスなのだが、『アースバウンド　地縛霊』よりはんぱで、ファンタジー世界の造形が凡庸である。
　老作家は回顧する。若くして戦場を味わった自分が、イギリスの片田舎で出くわした、魔女と妖精を。二人はともに美しく、自分を愛し、謎めいた力を秘めていた。
　読むなら、『奇術師の密室』みたいなトリッキーな作品を読みたいです、はい。

アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)