FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

怪奇小説傑作集2 英米編2/宇野利泰・中村能三訳

怪奇小説傑作集〈2〉英米編2 (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集〈2〉英米編2 (創元推理文庫)

 前述の通り、L・P・ハートリイ「ポドロ島」は怖い。これと、W・F・ハーヴィー「炎天」は生涯に渡って忘れられそうにない。W・F・ハーヴィー「炎天」も条理が通らないが、「ポドロ島」も条理が通らない。
 友人の婚約者アンジェラと暇つぶしにいった小島へのピクニック。突如として残忍に豹変するアンジェラの性格と、意味深長な「ぼく」の夢、そして「ぼく」、船頭、アンジェラの待つ運命。「ぼく」を含めて誰もがうさんくさく、後味は悪い。とにかく強烈な怪談。
 同じく「島」もので、忘れがたいのが「船を見ぬ島」。これは食べ物や飲み物には困らない、だがどうしても脱出できず、決して死ぬこともできないという、天国のような地獄の島を描いたもので、この島での人間関係が興味深い。この島は船長という男が支配しているのだが、彼には略奪してきた美女がいる。この美女、最初は船長を憎み、次の四十年を愛し合って過ごし、さらに次の百年間には彼に飽きてしまった。だが船長が美女にどんな感情を抱こうが、美女が船長にどんな感情を抱こうが、二人を含めて島の住人は島を出ることを許されないのだ。
 フレデリック・マリヤット「人狼」は昔話のようだがやはり面白く、S・H・アダムズ「テーブルを前にした死骸」は面白いことは面白いのだが、ラストが理に落ち過ぎていて、「怪奇小説」の雰囲気はあまり感じられない。
 ヘンリー・カットナー(C・L・ムーアの夫君だ)の「住宅問題」は生活感とユーモアとペーソスに、「不思議」が混じりあっていて好きだ。共働きで必死に働く夫婦は、いかにも裕福そうな紳士に部屋を貸す。ある日、紳士が長い間外出することとなった。彼は鳥籠のようなものを持っていたが、常に覆いをかけていた。紳士は鳥籠には決して近付かないでくれと頼むが、二人は動物だったら餌や水をやらねばならないという思いと、好奇心から、覆いを取ってしまう。そこかに夫婦は奇妙な世界に巻き込まれていく。
 シリーズ第一巻に続き、二巻も楽しめた。確か次も英米編のはず。

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)