FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

死をもちて赦されん/ピーター・トレメイン

死をもちて赦されん (創元推理文庫)

死をもちて赦されん (創元推理文庫)

 邦訳されたものとしては第六作目だが、この『死をもちて赦されん』は筆者ピーター・トレメインが修道女フィデルマを初めて世に送り出したシリーズ第一作目である。
 なぜ邦訳された順番がばらばらなのかは、「訳者によるあとがき」で説明されて、なるほどと思わせる。すでに邦訳された別の作品に比べると、かなり地味な物語である。そして、読んでみて驚いたのだが、フィデルマも他の作品ほどには完璧超人ではなく、気位が高いと言えば高いが、ごく普通の探偵であること(この巻からどんどんと、フィデルマはあらゆる方面にパーフェクトに進化していったのか)
 アイルランド系のアイオナ派か、それともローマ派か、ノーサンブリア王のもとで歴史的な教会会議が開かれようとしていた。だが、アイオナ派の女性修道院長が殺害され、修道院は混乱する。アイオナ派を支持する修道女にして法廷弁護士フィデルマは、ローマ派の修道士エイダルフと組み、事件の調査を始める。
 完璧超人ではないフィデルマとエイダルフとの出会い、そしてフィデルマがエイダルフに惹かれていく様子が初々しい一作。