野兎を悼む春/アン・クリーヴス
- 作者: アン・クリーヴス,玉木亨
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/07/27
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『大鴉の啼く冬』、『白夜の惑う夏』に続く、<シェトランド四重奏>、第三作目。今回はウォルセイ島(本当とはフェリーが通う海峡を挟んで東側に位置する)が舞台となっている。
『白夜の惑う夏』と同じく、狭い世界での濃密な人間関係が描かれており、今回はそこに血縁というしがらみも関わっている。この閉鎖的な人間関係の中に、遺跡を発掘しにやってきた大学院生たちの事情も絡む。
シェトランド署の刑事サンディは、帰省したウォルセイ島で、祖母ミマの遺体の第一発見者となる羽目になった。猟をしようとし、誤って撃たれたらしい、サンディの従兄のロナルドに。
ロナルドは誤射ということで、法律上の罪は問われなかった。しかし、このミマの死、なにかが奇妙だ。
ミマは若い頃は奔放な女性で、異性関係も華やかだった。彼女の亡き夫とその同志達は、第二次世界大戦中にノルウェー人達とともにドイツに対抗しようとしていた。その次の世代、ロナルドの母親とサンディの母親はライバル意識が強く、なにかと言えば張り合っていた。ロナルドとサンディは親しい友人同士だった。
辟易とするような閉ざされた環境の中で、ともに人生を重ねてきたサンディの親族たち。
一方、遺跡を発掘にやってきた、いわば「外」からやってきた人々にも、様々な事情を抱えていた。副大臣の母親を持つ、若い助手の女性ハティは、繊細で思い詰めやすい気質で、顔見知りだったミマの死にひどく動揺する。そして、精神の均衡が危ういものとなっていく。
事故か、殺人か、本当にやったのはロナルドなのか、それ以外の人間なのか、動機は過去にあるのか、現在のものなのか。
相変わらず「お話作り」のうまい作家。ミマの死が含む謎もさることながら、ハティの心が不安定になっていく描写がサスペンス性を醸し出している。
- 作者: アンクリーヴス,Ann Cleeves,玉木亨
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