石が流す血/フランセス・ファイフィールド
- 作者: フランセスファイフィールド,喜須海理子
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2009/10/10
- メディア: 文庫
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フランセス・ファイフィールドはフランセス・ヘガティ名義のものも含め、何冊か読んだことがあるのだが、これまでは今一つ琴線に触れるものがなかった。しかしながら、偶然手に取ったこの『石が流す血』はなかなか楽しく読むことができた。訳者あとがきによると、この『石が流す血』は比較的新しい作品のようだから、作者が変わったのか、当方の嗜好が変わったのか、どちらかかもしれない。
無慈悲さや冷酷さを感じさせるほどの辣腕で知られていた、女性弁護士マリアン・シアラーが高級ホテルの6階から墜死した。彼女のキャリアは絶頂にあった。恋人を虐待し、金銭を絞り続ける、誰もが認める屑男リチャード・ボイドを弁護して無罪を勝ち取ったばかりだったから。リチャードの恋人エンジェルは、姉ヘンリエッタの助けを借りて、どうにかリチャードのもとを逃亡したが、裁判でマリアンに責め立てられ、自殺した。
そして残された人間たちの、犯罪をも含んだドラマが幕を上げる。頭脳明晰な姉マリアンとは対照的に、だらしのない弟のフランク、マリアンによって無罪を勝ち取った犯罪者リチャード、自殺に追い込まれたエンジェルの姉ヘンリエッタ、そしてマリアンの遺言執行者トーマス。
彼らの言動は、亡きマリアンの、暗い部分を浮彫りにするものだった。
陰鬱な人間模様を描いたサスペンス。あの意味深長な締め括りは良かった。