FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ピサジ /マシュー・チューキアット・サックヴィーラクル監督

 イランのミステリ映画、アスガー・ファルハディ監督『彼女が消えた浜辺』を見たとき、「えっ、それってそんなにこだわらなければいけないことなの」や、「そんなことをして時間を使うより、もっと急いで先にすることあるんじゃないの」などと、心の中でよく声を上げた。
 文化がまったく違うのだから、その国の人々の価値観や言動や創造物などが、こちらのものと全然違うのだということは頭では分かっているつもりだが、実際に作品に触れると違和感が次から次へと湧いてくる。嫌になるほどありふれた言葉だが、「お国柄の違い」という言葉をひしひしと感じるのだ。『彼女が消えた浜辺』も、そしてタイのホラー映画『ピサジ 悪霊の棲む家』も。
 『ピサジ 悪霊の棲む家』は、両親を失い孤児となった美少女が、おばを訪ねるところから始まる。おばは工場を経営しているから、住み込んで働いてもいい。部屋も職業も与えてやる。だが代わりに、孫息子の子守をしろと命じる。ヒロインはそれを受け入れた。
 少年はひどく反抗的で、そしてなにかにひどく怯えていた。ヒロインもまた、犯罪に巻き込まれ、両親が眼前で殺されていった光景が忘れられず、悪夢に悩まされる。少年の、そして工場の従業員の話では、この家は幽霊屋敷だという。ときおり聞こえる不審な音、人影、そしてヒロインや少年が見る幻影は本当に幽霊のそれなのだろうか。あるいは、経営者でもあり、高名な霊能力者でもあるというおばに、なにか関わりがあるのか。
 とあらすじを書くと、正当派の幽霊屋敷映画のように思われるかもしれないが、ハリウッド産欧州産日本産のホラー映画を見慣れている身としては、創造者が「怖がらせようとしたであろうところ」、「面白がらせようとしたであろうところ」のツボがほとんど外れており、思わず首を捻った。
 なによりクライマックスが無意味に長い。あまりにも長い。長すぎて途中で眠くなる。そして辿り着いたオチも、唐突な感じが否めないものだった。
当方にとってはえらい怪作に感じられた。
 ちょっと風変わりな幽霊屋敷映画が見たい方に。

彼女が消えた浜辺 [DVD]

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