FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ハロウィン/ジョン・カーペンター監督

 これまでやたら怖がっていて、見ていなかった映画。しかしトビー・フーパー監督『悪魔のいけにえ』を見たことで、「あれ以上怖い映画などなかろう。『ハロウィン』だって同じだ」という変な覚悟ができ、見ることにした。
 怖くはなかった、思ったほどには。
 『悪魔のいけにえ』がただひたすら恐ろしいホラー映画だったするならば、『ハロウィン』は面白い、そして美しいホラー映画だった。
 そう、美しい。不死身の連続殺人鬼が、ひたすら他者の生命を奪い続ける映画であるにも関わらず、秋の、イリノイ州の田舎町を背景としたこの作品には、一種の詩情すら感じさせる。
 南瓜の仮面で顔を覆った狂人(なんと愛らしい六歳の子供だ)の、やや不自由な視界で映し出される実姉殺しの一幕から映画は始まるのだが、ブギーマン……名前は、マイケル・マイヤーズ……その人をさして映さず、彼が目にした風景、そして被害者達を観客に繰り返し見せる撮影方法が、非常に効果を上げてる。カーペンター自身がとても影響を受けたという、ハワード・ホークス監督『遊星よりの物体X』が作中でずっと流れているのも粋だ(傑作リメイク『遊星からの物体X』が作られるのは、『ハロウィン』よりあとなのね)
 なにか起きそうで、なかなか起こらない、見るものに焦燥感を抱かせる話の展開、そこに加えてカーペンター自身の手による不気味で巧みな音楽が、さらに恐怖を煽る。
 一九六三年、イリノイ州の田舎町。六歳の少年マイケルが、姉のジュディスを惨殺した。マイケルは精神病院に監禁され、一切の自由を奪われたはずだった。
それから十五年。ある嵐の晩、マイケルは精神病院を脱走し、故郷の町へと舞い戻った。ずっと彼を見ていた精神科医、ルーミス医師はマイケルを追う。 
一方女学生ローリーとその友人達は無邪気にハロウィンを楽しもうとしていた。惨劇がすぐ傍らにまで迫っているとも知らずに。
 『悪魔のいけにえ』同様、低い予算でも、血や内臓をさして見せなくても、第一級のホラー映画を創造することは可能なのだと証明してくれた作品。
 傑作。

↑リメイクはまだ見ていない