FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

公爵の危険な情事/ロレイン・ヒース

公爵の危険な情事 (扶桑社ロマンス)

公爵の危険な情事 (扶桑社ロマンス)

 これまでこの作者の作品には強い個性を感じていたが、この『公爵の危険な情事』からはそれが感じられない。ごくごく普通の設定の、ただしある一定の水準以上は面白い、ヒストリカルロマンスである。
 一八八八年。当時としてはオールドミスの二十六歳、貧しい伯爵家の娘ルイザは、未婚女性の付添役としてみずから働く決意をした。おりしもアメリカからは、縁組によってイギリス貴族の爵位を狙う富豪たちが娘を連れてやってきていた。
 ルイザは、アメリカ人の銀行家ローズ家に雇われ、娘であるジェニーとケイト、二人の付添役となる。しかし兄の友人、ホークハースト公爵が姉妹を狙っていると知り、動揺する。ホークハースト公爵自身も金銭がなく、アメリカ人の富豪の娘との縁談を願っていたのだ。ホークハースト公爵の放蕩者ぶりを知っているといるルイザは彼を姉妹に近づけてはならじと奮闘するが、いつしか二人は惹かれ合う。
 十九世紀の英国を舞台にした、堅物オールドミスと放蕩者の青年貴族が反発しつあいながらも恋に落ちるという、良く言えば王道、悪く言えばパターンを一歩も外れない作品。もっとも筆力のある作家なので、前述の通り、そこそこ面白い。
 ロレイン・ヒースらしさはあまり感じさせないが、逆を言えば彼女の作品を苦手としていた人が読むと面白いのかも。