FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

放課後はミステリーとともに/東川篤哉

放課後はミステリーとともに

放課後はミステリーとともに

 鯉ケ窪学園高校探偵部のシリーズものだが(だよね)、ほとんど副部長である霧ケ峰涼しか出てこない。この「名前がエアコン」呼ばわりされるときれる、霧ケ峰涼が一人称で語り手を務める本格ミステリの短編が八つ収録されている。
 「男女ともに、こんな親父臭い高校生がいるか〜!」と叫びたくなってしまうのは、高校生が登場する氏の作品を読む都度に覚える感想だが、「今回もしっかりとして謎解きがあって、よくできていた」というのもやはり読む都度覚える感想である。この『放課後はミステリーとともに』も例外ではない。
 一見「ゆる」く見せかけており、しかしその実ちっとも「ゆる」くなどなく、きりりとしまった本格ミステリ短編集なのは、歌野晶午「舞田ひとみ」シリーズと共通しているが、あちらほど陰惨ではない。ほとんど殺人事件も出で来ず、後味もよきものとなっている。
 足音なき傷害事件を描いた「霧ケ峰涼とエックスの悲劇」と、長すぎる墜落もの(こちらも傷害事件で済んでいる)「霧ケ峰涼の屋上密室」が良かった。
 初心者にもマニアにも勧められる短編集。