FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

オーメン/ジョン・ムーア監督

 超がつくほど有名な作品でありながら、これまで見たことがなかったのは、いわゆる「キリスト教テーマ(この映画の場合、反キリスト教的テーマか?)」の内容の映画の面白さ、あるいは恐怖が、当方に十全に理解できるかどうかこころもとなかったからだ。
 しかし、心配は無用だった。さすが大ヒットした作品だけあり、宗教的なテーマを強く打ち出しながらも、しっかりとしたエンターテイメントとして仕上がっている。さらに付け加えれば、シリーズ一作目のこの作品に限ったことかもしれないが、「悪魔の子うんぬんって本当のこと?もしかして周囲の妄想じゃないの」と考える余地も残されている。
 アメリカ人外交官ソーンは、ローマで生まれたばかりの息子を失った。だが、そのことを最愛の妻キャサリンには死産の件は告げられなかった。告げられなかったまま、息子と同じ時刻……六月六日午前六時……に生まれた男児を、神父の勧めもあり、養子にし、ダミアンと名付ける。
 順風満帆の出世を遂げるソーンだが、不吉な影は少しずつ忍び寄ってきていた。華やかなパーティーの最中、子守が皆の見ている前で、なんの脈絡もなく首を吊る。やがて、ソーンがダミアンを養子にした際、その場にいたという神父が彼につきまとうようになっていた。ダミアンが悪魔の子だという妄言(と、そのときのソーンには思われた)を吐きながら。
 だが周囲であまりにも陰惨な事件が重なるため、ついにソーンは調査を開始する。
 要所要所で起こる惨劇のタイミングが実に的確で、最後まで巧みにサスペンスを持続させている。
 アンファンテリブルもの……と言いたいところだが、ダミアン本人はみずからの手で、誰かに攻撃を仕掛けている様子を、なかなか観客に見せることはない。攻撃らしきことがあったとしても、「それは無知な子どもがついうっかりとやってしまったこと」のようにも見える。そのあたりが、前述の「悪魔の子だなんて周囲の妄想では?」という考えにも繋がっていく。
 それだけに、ラストの笑顔はひどく意味深だ。
 第一級品のホラー映画だが、流血の量は比較的少ないので、ごく普通の映画ファンにも面白いものを探している人にはお勧めできる(もっともそんな人は、すでにこの『オーメン』は見ているかもしれないが)
 今更言うでもないが、傑作。
 次は、同じ理由で敬遠してきた、ウィリアム・フリードキン監督『エクソシスト』だ。

エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]

エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]