ぼくのエリ 200歳の少女/トーマス・アルフレッドソン監督
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一カ月の間に、二度もこの言葉を使うとは思わなかった。大傑作。
今はまだ二〇一一年の二月。それにも関わらず、「二〇一一年に見た映画でもっとも面白かったものを三つ挙げて」と言われたら、すべて今月見たトーマス・アルフレッドソン監督『ぼくのエリ 200歳の少女』、ファン・ホセ・カンパネラ監督『瞳の奥の秘密』、ジョン・カーペンター監督『遊星からの物体X』の三作品を選ぶことだろう。これほど立て続けに傑作にあたった濃密な月というものを、当方はこれまで経験したことがない。
原作は、脚本も書いているヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト『モールス』だが、未読。
ピュアなボーイ・ミーツ・ガールの物語であり、同時にひどく物哀しい吸血鬼映画だ。
ストックホルム郊外。両親が離婚したため、母親と二人で暮らす十二歳の少年オスカー。彼は同級生からの苛めに遭っていたものの、誰にも相談できず、苦しんでいた。そして苛めっ子への復讐を夢見ていた。
ある日、彼は夜の公園で、見たところ同じ年齢ぐらいの少女エリと出会う。
何度も言葉を交わすうち、オスカーはエリに恋をする。そのとき、町では被害者が血を抜き取られ、殺されるという凄惨な連続殺人事件が発生していた。
オスカーを演じている役者は少女に見紛うような少年で、エリを演じている役者はどこか野性味のある、少年風の面差しをしている少女だ。そんな二人が並んで北欧の冬を背に佇んでいるだけでも耽美的であるにも関わらず、そこに種を超えた禁断の恋が切なく、妖しく絡むともなれば、もうたまらない。
見るものに早いうちから明かされるが、エリは他者の生命を奪わねば生きてはいけない吸血鬼だ。そしてオスカーは苛めの問題で、ひどい孤独感を味わっている。
エリと、エリの保護者にして従者(この二人の関係、そしてその関係が終わる場面もいい)が引き起こした事件は人々の耳目を集めずにはいられなくなり、エリは町を離れるしかなくなった。同時にオスカーへの苛めも、生命の危険に関わるほどのものへとなっていく。
この映画、素晴らしい場面は幾つもあるものの、思わずあっと言わされたのが、プールでのクライマックス。真正面から扱ったのなら、いくらでも派手な場面にできただろうに、ああいった形で見せ、しかも見るものに、「どれほどのことが短時間で行われたのか」と想像させてしまうのが凄い。見ていない人はこの文章、なにを言っているのかさっぱり分からないだろうが、この場面を含めて、そしてこの映画は抜きん出て素晴らしい。ホラー映画ファン、そして吸血鬼映画ファンならぜひとも見てほしいのだ。
日にちの都合が合わず、映画館で上映しているときには見ることができなかったのだが、これはぜひともスクリーンで見たかった。
もう一度書く。大傑作。吸血鬼映画の歴史に残るという前評判に偽りなし。
- 作者: ヨン・アイヴィデリンドクヴィスト,John Ajvide Lindqvist,富永和子
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