FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

フロスト気質/R・D・ウィングフィールド

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

 久しぶりに読むフロスト警部シリーズ。荻原浩の解説を読み、R・D・ウィングフィールドが亡くなっていることを思い出した。まだ翻訳されていないこのシリーズは、残り二作である。
 下ネタ大好き、仕事も大好き、刑事の直感のままひたすら動き回り、周囲をも動かしまくるジャック・フロスト警部四作目である。上下巻に分かれる分厚さだけあり、フロスト警部含むデントン署を襲う事件も、殺人、連続傷害、誘拐と盛りだくさんである。
 ハロウィーンの夜、ゴミの中から幼い少年の死体が見つかった。折しもデントンの町では、幼児を狙って危害を加える事件が連続して発生している。中古車販売業者の十五歳の娘が誘拐され、少女は無事家庭に戻ることができたが、この誘拐事件そのものがどうもうさんくさい。また別のある家庭では、幼い子供三人が殺され、その母親が行方不明になっている。無理心中なのか?複数の事件が折り重なるようにして発生する中、ある失踪事件は誘拐事件に変貌した。
 嫌々ともに働くことになったジム・キャシディ警部代行は、出世街道をひた走ることを望む男。過去に十代の娘を轢き逃げで失っており、その犯人をフロストが検挙できなかったことから、彼に含むものを持っている。
 いつものことながら、フロストはよく働く男である(使われる部下達も大変だが……)。今回、犠牲者に幼子やまだ若い少年少女が多いことから、やや陰惨な印象も与えるが、フロスト警部の下品なほど力強いエネルギーが救っている。
 メインプロットの一つ、ある登場人物の失踪から誘拐事件へと変貌するまでの流れ、犯人との身代金を巡る交渉、そして容疑者を追い詰めていく様子は、まことに迫力がありお見事。
 相変わらず高い質を守っている警察小説。

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)