いつかあの丘の果てに/エリザベス・ローウェル
- 作者: エリザベスローウェル,Elizabeth Lowell,佐野晶
- 出版社/メーカー: ハーレクイン
- 発売日: 2007/08
- メディア: 文庫
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初めて読む作家で、しかも「西部劇+ヒストリカルロマンス」という、当方が初めて触れる作風のロマンス小説だった。これまで読んできたヒストリカルロマンスは、大抵が貴族か、上流階級の人間の館(さもなければ、そういった館に行きつくまでの旅)を舞台にしていたのだが、これは奇岩があふれ、険しい丘や峡谷が連なる大自然がほとんどの舞台となっている。馬に騎乗しての命がけの脱走や、銃を使っての戦闘などアクションも多い。
南北戦争が終わって数年後。赤毛の若い女性ジャナは、父を失って以来、ユタの荒野に一人で暮らしていた。治安が悪く、白人と先住民の諍いが絶えない土地で生き伸びるため、ジャナは男の服に身を包み、少年のふりをしていた。彼女の数少ない心の癒しは、野生の馬たちと触れ合うことだ。
ある日、ジャナは傷付き、行き倒れていた男を救い、自分の隠れ家へと運び、献身的な看病をした。なんとしても生き延びようとしていた男に、不屈の魂を感じたからだ。
ジャナを少年だと勘違いしていた男は、タイレルと名乗った。彼は野生の種馬ルシファーをとらえるつもりでやってきたのだ。実家の牧場を立て直し、発展させ、シルクを着た美しい淑女を妻に迎えるため。
ジャナはタイレルと出会い、惹かれることで、自分がいかに孤独だったか気付いた。しかしジャナは、タイレルが妻に迎えたいと思っている、優美な女性とは全く異なる存在だった。
女性の一人称で「あたし」は通常は苦手なのだが、男まさりの行動を示しながら、無垢でナイーヴな一面を持つジャナにはよく似合っていた。
西部劇調のロマンス小説も面白い、と知ることができて良かった。エリザベス・ローウェルの小説もこれから追っていこう。
読み応えのある一冊。