FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

消えゆく光/マイケル・ディブディン

消えゆく光 (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)

消えゆく光 (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)

 不思議な印象を与えるミステリにして、老人小説。老人ホーム「夕まぐれ荘」に住まう老女ローズマリー。探偵小説好きのローズマリーは、友人ドロシーとともに、古典的な殺人事件のあれやこれやを思い描くことで、日々の無聊を慰め、老いの苦さや経営者兄妹の横暴に対抗してきた。妄想や空想に浸るローズマリーの前で、本当に一人の人間が死ぬ。
 初めて読む作家なのだが、面白かった。創造力ある老女の空想とも妄想ともつかない話に引っ張り回された揚句、経営者兄妹の陰謀にも付き合わされ(これは現実の話なのか、あるいは老女の妄想の一部なのか?)、本当に人が死んでこれは現実の警部、ジャーヴィス警部が老人ホームに乗り込んでくる。
 ローズマリージャーヴィス警部の丁々発止、第三部での二転三転する話の転がし方などが興味深い、極めてユニークなミステリ。