FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

午前零時のフーガ/レジナルド・ヒル

午前零時のフーガ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

午前零時のフーガ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 <ダルジール&パスコー>シリーズ、長編二十二作目。「リゾート地で、休暇中の名探偵が事件に出くわす」本格ミステリだった前作『死は万病を癒す薬』とはまったく異なり、二十四時間という時間内に舞台が限定されたサスペンスである。読み始めたとき、同じ作者、同じシリーズなのに、あまりの違いにびっくりした。しかし良かった。
 今回は、前述の通りサスペンス、それも比較的多数の人間が登場する群像劇タイプのサスペンスである。ゆえにダルジールも、主要な役どころではあるものの、主役というよりも、主要な登場人物の一人という印象が強い。
 黒白混血の人気政治家、下院議員のデイヴィッドは、さらに名声を大きなものとするため、冷徹で有能な個人秘書マギーの助けを借りつつも、権力への道を驀進していた。
 その父親ゴールディーは、のし上がるためならばどれほどでも汚い手を使い、邪魔になる人々を傷付けてきた。息子が有名政治家となった現在でも、その姿勢は変わらない。彼の命令を受け、チンピラ兄妹、強い絆で結ばれたフラーとヴィンセントが裏で動いていた。
 そしてこの父子を、グウィンやビーニーといったジャーナリスト達が注目していた。
 職場に復帰したダルジール警視は、古い知り合い警視長ミックから相談を受けていた。彼は、七年前に失踪した部下アレックスについて気に病んでいた。ミックはその男の妻ジーナと交際し、再婚を考えているのだが、最近そのアレックスの写真が送りつけられたというのだ。アレックスは生きているのか?ダルジールは、部下ノヴェロを巻き込み、ジーナの相談にのる。
 <ダルジール&パスコー>シリーズは初心者にはとっつきにくい代物だと思うが、この『午前零時のフーガ』は親しみやすいうえに面白く、レジナルドヒルが初めてだという人にも勧めやすい。
 この作品は、映画にしてもきっと面白いはず。
 ラストに待ちうける驚きもよし。