シューマンの指/奥泉光
- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/23
- メディア: 単行本
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音楽にはさっぱり詳しくない当方にも、面白く読めた「本格音楽ミステリ」である。もっとも中盤辺りまで書いてあるのは音楽と、天才美少年ピアニストのことばかりである。
医師の「私」は、留学中の友人から、ピアニストとして活躍しているはずのない人間が、ピアニストとして活躍しているという手紙をもらった。「私」は回想する。
かつて音大受験生だった頃、友人だった美少年、永嶺修人。容姿端麗にして圧倒的な才気を持つ彼に、「私」は同性ながら恋をしていた。だが修人の恋人として登場した一人の少女が、そして卒業式の夜に起きた殺人事件が、彼らの関係に破局を呼び、修人の指に致命的な怪我を負わせる。
素人の哀しさ、音楽の部分はさっぱり理解できない(分かるのは音楽家の名前ぐらい)なのだが、単純にミステリとして楽しめた。
もしかして冒頭の感じから、「すべては幻覚でした」などというオチがつくのではないかと考えてしまったが、それはなかった。もやもやとしたものは残るが、それでも話はきれいにまとまっていく。
物語のキーとなる人物の名前に隠された秘密にはにやり。