FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

薔薇色の恋が私を/コニー・ブロックウェイ

薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

 「薔薇の狩人3部作」の第一巻。シリアスからラブコメディまで、ブロックウェイは芸風の広い作家である。一巻を読む限りでは、「薔薇の狩人」はシリアスな作品のようだ。
 十九世紀初頭の英国ヨーク。没落しつつある地方貴族ナッシュ家の三人の青年が訪れた。三人の青年は、ある秘密を隠し持つ修道院(孤児院でもある)で育った三人組で、長じては英国のため密偵として戦った。彼らは裏切り者によって生命を落としかかるものの、軍人ロデリック・ナッシュの自己犠牲ゆえ助かった。彼らは残されたナッシュ家の人間のため、救いを求められたのなら奉仕するつもりだと申し出た。
 三年後。主なきのちのナッシュ家は貧窮という意味では、落ちに落ちた。次女で若き未亡人のケイトは、裕福な親戚の力を借りるため、旅に出る。それはあまりの貧乏ぶりに使用人にさえ逃げられた身として、実に危険な代物だった。宿や旅路には強盗の類がごろごろしている。
 それでも前に突き進もうとするケイトの前に現れたのは、スコットランド出身のキット・マクニール。彼女の父親ロデリックに救われた青年達の一人だ。護衛を買って出たキットとケイトの間に恋が芽生える。だが貴族の未亡人と、一介の兵士、二人の間には身分差があった。
 タイトルこそ「薔薇色の恋」だが、内容は障害多き恋を扱っている。
 マクレアン三部作同様、ゴシックロマンとしての側面を隠し持つ。ある目的をもって子供達を集める修道院、薔薇に秘められたメッセージ、そして密輸絡みの犯罪などなど。
 面白かった。シリーズ完結まで、この面白さが失われませんように。