FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ハイランダーと魔法の乙女/ジェン・ホリング

ハイランダーと魔法の乙女 (オーロラブックス)

ハイランダーと魔法の乙女 (オーロラブックス)

 初めて読む作家で、ロマンス小説の中でもあまり馴染みのないジャンル、パラノーマルものなのだが、とても面白かった。ロマンス小説の中でも、魔法や妖精、吸血鬼といった超常現象テーマを扱うものをパラノーマルというのだが、この『ハイランダーと魔法の乙女』は、持ち物に触れるとその所有者の記憶を読みとることができる超能力者、当時では「魔女」と呼ばれる娘がヒロインで、しかも十六世紀末を舞台にしているから、ヒストリカルにしてパラノーマルものである。
 十六世紀末、スコットランド魔女狩りの嵐が吹き荒れる、血なまぐさい時代。グレン・レア族氏族長の娘、イソベルは魔女狩りから身を守るため、父親によってイングランドの貴族に預けられていた。イソベルやその妹達と同じく不思議な力の所有者だった母は、その魔女狩りで生命を落としている。
 イソベルの縁談を父がとり決めたため、イソベルは久しぶりにスコットランドへと帰ることとなった。当時はイングランドスコットランドはまだ連合王国とはなっておらず、それぞれ別の国である。イソベルの護衛として現れたのはフィリップという立派な騎士。イソベルには婚約者がいるにも関わらず、旅をともにする間に二人は急速に惹かれ合うようになる。
 ロマンス小説には傲慢で強引なヒーローが多いが、その中でもフィリップは節度ある男性で、そこがいい。イソベルもフィリップを愛するようになるものの、諸事情からなかなか積極的になることができない。二人とも「すぐに欲望全開!」とはならず……そうしたロマンス小説も結構ある……互いの立場を考え、気持ちを懸命に抑えようとする姿がいじらしい。
 三部作だが、ぜひとも続きを読んでみたい。