FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

優雅な町の犯罪/キャロリン・G・ハート

優雅な町の犯罪 (ミステリアス・プレス文庫)

優雅な町の犯罪 (ミステリアス・プレス文庫)

 元新聞記者の老婦人ヘンリー・Oを主人公に据えたシリーズの第二作。おそらくこのシリーズの中では最高傑作だろう。
 テネシー州の小さな町フェア・ヘイヴン。裕福で、作り物のように美しく、平和な町。だがこの町には何匹もの邪悪な蛇が潜んでいた。金持ちで意志が強く、行動力に満ちた女性パティー・ケイが殺され、その夫が容疑者とみなされ逮捕された。そしてそれ以前悪意に満ちた匿名の手紙のため、一人の少女が自殺していた。
 ヘンリー・Oがパティー・ケイ殺人事件に首を突っ込んだのは、逮捕された夫クレイグが友人の甥だったため(そのため彼女は、事件の調査中ずっとみずからがクレイグの伯母のふりを続ける)だが、やがて彼女は被害者の強い個性に魅了される。パティー・ケイは経済力があり、率直で裏表なく、同時に他人の感情の機微にやや鈍いところがあった。十五歳の少女フランシー・ホリスの自殺は、愛息ボビーを十二歳で失ったヘンリー・Oの心を強く動かした。
 やがて彼女は知る。楽園のごとき町の裏で蠢く、醜悪な真実を。閉鎖的な土地、閉鎖的な人間関係の中で起こる殺人事件を描かせて抜群。
 ヘンリー・Oはパワフルすぎて身勝手な印象は受けるが、この巻の結末で見せた行動力はナイス。