FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

インセプション/クリストファー・ノーラン監督

 迫力、とにかく迫力。
 音と映像の洪水に酔いそうだった。
 夢の中の夢、コブとそのチームが入り込む、幾層にも重なった世界と、そこで彼らが繰り出すアクション。
 圧倒的という言葉がまことに似つかわしい。映画館で見ることができて良かった、しみじみとそう思う作品である。下世話な話だが、製作費は莫大なものであろうと推測される。
 コブは、他者の潜在意識に入り込み、情報を盗むことができる産業スパイ。事情があり、我が子達と離れて暮らしている。彼に家族と再び生活できることを条件に、大企業のトップ、サイトーがライバルを潰すための依頼をもちかけてきた。それはライバル会社を継ぐ息子ロバートからなにかを盗むのではなく、逆にある考えを「植え付ける」という依頼だった。
 彼はサイトーも含め、身辺調査のプロや、調合師や、夢の設計師などチームを率いて、ロバートの深層意識へと潜り込む。ロバートの防衛意識やタイムリミットと皆で戦いながら。だが、もっとやっかいな敵がいた。
 コブの罪悪感が呼ぶ亡き妻、モルだった。モルが現れては、コブとチームの邪魔をする。このままではミッションの遂行どころが、皆の生命(正気)さえ危ういものへとなっていく。
 秀逸なアイディアと、迫力の映像美と、役者たちの輝きが一体と化した、まさに映画の中の映画。
 傑作。