殺人者の烙印/パトリシア・ハイスミス
- 作者: パトリシアハイスミス,深町真理子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1986/06
- メディア: 文庫
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再読である。
妻を殺したという妄想をふけり、その死体の処理という「ごっこ遊び」を楽しんでいた作家の男が、妻の失踪により周囲からあらぬ疑いをかけられ、やがてのっぴきならないところまで追い詰められていく……という大元のストーリーは覚えていた。
覚えていたが、改めて読んでみても面白かった。最初は『慈悲の猶予』というタイトルで出版されたこの小説、さすがは巨匠の代表作の一つとして数えられる作品である。
作家のシドニーと画家のアリシア。若夫婦の関係は、最近しっくりとはいかないようになっていた。シドニーは頭の中で、幾度も妻殺しの場面を思い浮かべた。いさかいの末、アリシアが家を出ると、彼は妻を殺したつもりになって、死体を包んだ(つもり)の絨毯を実際に森に埋めた。これが転落の始まりだった。
シドニーは鈍感なのか、浮世離れしているのか、周囲が「アリシアが姿を見せないのは、シドニーが彼女を殺したせいではないか」という疑いを持っているのを知っているはずなのに、なかなか「ごっこ遊び」をやめずに、己への疑いをさらに深めることになり、やがて破滅していく。
この男の奇怪な心理と、破滅への道程を、ハイスミスはハイスミスにしか書けない冷徹な筆致で描き出している。
瑣末な事柄だが、何度見ても木村泰子の表紙のイラストレーションと内容は激しく乖離している。なぜだ。
- 作者: パトリシア・ハイスミス,深町真理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1966
- メディア: 単行本
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