FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

放蕩貴族を更生させるには/カーラ・ケリー

放蕩貴族を更生させるには (ラベンダーブックス)

放蕩貴族を更生させるには (ラベンダーブックス)

 今現在(二〇一〇年七月)、翻訳されているカーラ・ケリーの作品は『ふたたび、恋が訪れて』とこの『放蕩貴族を更生させるには』の二作品である。
 『ふたたび、恋が訪れて』は傑作だった。だが、驚いたことにこの『放蕩貴族を更生させるには』も、負けないぐらいよくできた作品だった。三者三様に全く個性は異なるながら、メアリー・ジョー・パトニー、リサ・クレイパス、そしてこのカーラ・ケリーが、当方のヒストリカルロマンス界における三大アイドルとなりそうだ。
 十九世紀英国。ラグズデール侯爵ジョン・ステイプルズは自堕落な生活を送っていた。彼はアイルランドを、そしてアイルランド人を憎んでいた。かつてジョンは軍人として、反乱を鎮圧するため、やはり軍人である父とともにアイルランドへと向かった。だが、父親の力で大尉の地位を得たジョンは、まったく無能な将校だった。結果ジョンは眼前でアイルランド人に父を殺され、自身は片目と、そして生きる気力を失うこととなる。
 一方、いとこの使用人としてジョンの眼前に現れるヒロイン、アイルランド人のエマも英国人を憎んでいた。かつてある事件に巻き込まれた結果、英国人によって一家離散を強要され、皆の生死すら掴めていない有り様なのだ。
 おかしななりゆきから、ジョンはエマの窮地を救う。だがそれは、二人の互いへの理解、そしてそれぞれの魂の救済の始まりだったのだ。
 ストーリーの流れとして、三百六十ページ以降の展開とこのエンディングは「あるだろうな」と考えていたし、陳腐と言えるほどの場面と結末なのだが、やはり感動する。
どうでもいいが、「二日酔いで嘔吐するヒーロー(その描写がしっかりある)」ってロマンス小説の中で初めて見るかも。
 『ふたたび、恋が訪れて』と比べても遜色のない傑作。

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)