FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

悪魔パズル/パトリック・クェンティン

悪魔パズル (論創海外ミステリ)

悪魔パズル (論創海外ミステリ)

 <パズル・シリーズ>の第五作目で、力強いサスペンス。最初はよくある設定の物語かと思いきや、周囲の人間の思惑が分かった辺りからの展開、そしてクライマックスでのひねりなど読み応えは十分あり。
 ある事件に巻き込まれ、記憶を失った一人の男(読者には最初から彼がピーター・ダルースだと分かるが、本人には自分が誰か分からない)。目を覚ました彼は、ベッドの中にいた。彼は未亡人の母親、妹、そして妻といった、女性に囲まれていた。そして教えられた。あなたの名前は、ゴーティー。富豪の放蕩息子よ、と。母親も妹も妻も、とびきり美しい女性だったが、なにやらうさんくさい。男性の医者や使用人もうさんくさいという点では、同じだ。自分はなんらかの理由でこの「家族」に監禁され、なにかの陰謀に巻き込まれているのでは、と男は疑うようになる。
 パトリック・クェンティンの作品群の中では『二人の妻をもつ男』や『わたしの愛した悪女』といった作品を連想させられる作品。何人もの魅惑的な悪女が登場するため、解説で横井司が書いているよう、こちらこそ『悪女パズル』の邦題が似つかわしいのではないだろうか。
 記憶喪失という手垢にまみれたような題材を使っているものの、それまで未訳だった<パズル・シリーズ>の一冊が新たに翻訳され、広く人目に触れることになったという事実も含め、値段分の価値はきっちりとある。
 ぜひともまだ翻訳されていないダルース夫妻ものの翻訳及び、手に入りにくいダルース夫妻ものの復刊……できれば新しい翻訳で……をお願いしたい。


悪女パズル (扶桑社ミステリー)

悪女パズル (扶桑社ミステリー)

本格ミステリとして、とても面白かった!

二人の妻をもつ男 (創元推理文庫)

二人の妻をもつ男 (創元推理文庫)

↑この二冊はサスペンスとして、そこそこ面白い。