FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ふたたび、恋が訪れて/カーラ・ケリー

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

 落ち着いた雰囲気の、よきロマンス小説である。
 派手な展開や官能場面などはあまりないのだが、そういった地味なところが一種の渋さ、そして風格さえも醸し出している。
 十九世紀初め、英国はヨークシャー。若き未亡人ロクサーナは、二人の幼き娘を抱え、途方に暮れていた。牧師だった夫亡きのち、義兄が彼女達を養うと申し出た。だがそれは、妻帯者である義兄の愛人となることが条件だった。逃げ出した彼女は、小さく古ぼけた家を借りる。家の持ち主は侯爵ウィン卿。彼は、ナポレオンとの戦争から疲弊して帰ってきた男だった。戦争で親友達を失ったことばかりではない、自身の離婚による醜聞、肉親との不和、様々なものが彼を疲れさせていた。
 ウィン卿が領地の視察に行った際、二人は知り合う。一緒の時間を過ごすうち、二人はやがて互いの心の傷を癒していき、ともに困難に立ち向かっていくのだった。
 甘さはやや控えめ、どこか古風で静謐なムードの佳品。
 こういうロマンスが読みたかった!