FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

エスター/ハウメ・コジェ=セラ監督

エスター [DVD]

エスター [DVD]

 面白かった。二時間を超える長さだが、途中でだれることもなく、最後の最後まで楽しませてくれた。
 ダニエルとマックス、一男一女を持つケイトとジョンのコールマン夫妻。ケイトは三人目の子を身ごもるものの、不幸にもその子は生まれてくることはなかった。ショックからなかなか立ち直ることのできない二人は、養子を迎えることにした。孤児院で二人が惹かれたのは、大人びて、聡明で、そして一風変わったエスター。シスターによると、ロシア出身の九歳の少女ということだ。夫妻は、エスターをコールマン家へと迎え入れる。しかしエスターは邪悪な魂の持ち主で、己の目的のために平然と嘘を重ね、人を脅し、他者の生命を奪った。やがてコールマン家の絆は危ういものへとなっていく。
 よくある「アンファンテリブル」もの……ではない。エスターが隠し持つ、ある秘密、これは終盤近くに明かされるのだが、ここに至るまで細かなエピソードの積み重ねがうまい。エスターの様々な言動に違和感を覚え、ケイトはかなり早い時期からエスターを疑うのだが、ジョンはそうではない(見てて苛々するよ)。ジョンを含め、他の大人達はエスターよりもケイトを疑い、エスターへの態度を非難するのだ。
 季節は冬だが、雪を背に佇む黒髪黒瞳のエスターは、まさに雪の女王の少女版に見える。
 ホラー映画好き、サスペンス映画好きにお勧めしたい一作。