FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

耳をすます壁/マーガレット・ミラー

耳をすます壁 (創元推理文庫)

耳をすます壁 (創元推理文庫)

 十年以上も前に読んだサスペンスである。どんな話だったか、すっかり忘れていたから、楽しめた。マーガレット・ミラーお得意の「失踪」を扱ったテーマの、風変わりなサスペンスだ。
 メキシコへと旅行へ出かけた女友達二人、エイミーとウィルマ。ホテルには豊かな生活を夢見ながら、ホテルの客の会話を盗み聞きするのが日課の若いメイド、コンエスラがいた。
 旅の途中、ウィルマは墜死する。エイミーは帰国し、夫ルパートの元に戻るものの、そのまま行方をくらました。エイミーを溺愛する兄ギルはルパートを密に疑う。
 ラスト一行にのけぞるタイプの作品だが、この真相に察しがつく読者は多いはず。特筆するべきはそれまでも作中を包み込む物悲しく、エキゾチックな雰囲気にこそある。
 代表作だとか傑作だとかとまでは言えないものの、マーガレット・ミラーという作家の特徴がよく出た秀作。