FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

風船を売る男/シャーロット・アームストロング

風船を売る男 (創元推理文庫)

風船を売る男 (創元推理文庫)

 (現代から見れば)どことなく古風で、そして健全な作品を書くシャーロット・アームストロングの本邦初訳作。めでたい。まだまだアームストロング作品を復刊&翻訳していただきたいものだ。
 『風船を売る男』とは、考えてみれば不思議なタイトルである。読んでも読んでも「風船を売る男」は出てこない。出てくるのは、裕福な夫の両親に幼い息子を奪われそうになりつつ、必死で息子を守ろうとしている若い母親と、夫の両親に依頼され、正体を隠したまま、この若い母親に接近し、罠に陥れようとしている男である。そして二人が住まうことになるアパートの一風変わった住人たち(特に三人の老女が魅惑的)
 「『風船を売る男』ってタイトルはなんなんだ?」と考えていると、その登場シーン、そしてその使い方ににやりとするはず。
 中盤はややかったるい場面もあるが、終盤の急展開からラストにかけてはやはり面白かった。