とまどい/リサ・クレイパス
- 作者: リサクレイパス,Lisa Kleypas,平林祥
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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不思議だ。ヒストリカルロマンスの分野を読み出してまだ日が浅いが、「もっとも素晴らしい作品」と「もっとも駄目な作品」の作者が同一人物になってしまった。
もっとも素晴らしい作品とは、リサ・クレイパス『もう一度あなたを』だ。リサ・クレイパス版『嵐が丘』で、メロドラマの大傑作である。もっとも駄目な作品とは、やっぱり彼女が書いたこの『とまどい』である。
ロマンス小説で、ヒロインが聖女という設定はままある。そこはいい。行き過ぎると鼻につくことはあるが、「まあ、ロマンス小説によくいるタイプだから」と割り切れる。
問題は、この聖女タイプのヒロインが、己の性格が原因で事件の被害を拡大し、周囲に大きな迷惑をかけて、しかもあっさりとそれが許される展開になってしまったときである。こういうストーリーは大嫌いだ。 この『とまどい』は、ちょうどストライク。途中まではそこそこ面白かったのに、終盤にヒロインが取った行動で思わず「あかんわ」と関西弁で突っ込んでしまった。えっ、そこで法を選ぶの?これまであの人がしてきたことはなんだったの?
十九世紀半ばの英国東部。慈善事業が生き甲斐の若き伯爵未亡人ラリーサは戸惑った。一年前、事故死したはずの夫ハンターが生きて帰ってきたというのだ。しかもハンターと顔を合わせたラリーサはさらに戸惑うこととなる。なぜなら彼の人間性はあまりにも良い方向に変わっており、結婚生活中には全くなかった愛情(二人の婚姻は親の決めた政略結婚で、ハンターは別に愛する女性がいた)が芽生えるようになったからだ。
「つまらない」だとか「平凡」だとか言った形容を通り越し、思わず怒りすら感じてしまった作品。悪い意味で、このロマンス小説のことは決して忘れないはず。
- 作者: リサクレイパス,Lisa Kleypas,平林祥
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2006/12/10
- メディア: 文庫
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