FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

赤い薔薇を天使に/ジャッキー・ダレサンドロ

 

赤い薔薇を天使に (ラズベリーブックス)

赤い薔薇を天使に (ラズベリーブックス)

 たった一つだけ、おかしな点があるロマンス小説の優等生。このたった一つのおかしな点については、後に述べる。
 公爵家の長子スティーヴンは、森の中で生命を狙われた。暗殺者の手に危うくかかるところだったのは、二回目だ。犯人として内心で彼が疑ったのは、出来の悪い弟グレゴリーだった。
 スティーヴンは、森の中でヘイリーに救われる。ヘイリーはまだ若い女性の身でありながら、家族の生活を一身に支える優しい娘だった。スティーヴンは暗殺者から身を隠すため、家庭教師と身分を偽り、ヘイリーの手厚い看護を受けることになる。
 やがて二人は惹かれ合い、お互いの心のすれ違いやらなにやらを経て両想いとなり、晴れてハッピーエンドを迎えるのだが、この物語、なぜか「二人は身分違いだ。結婚は許さないぞ」と言い出す人間が出てこないのである。他のロマンス小説ではこう言いだす人間が、二人の恋路の障害として頻繁に顔を出すのに。
 作者はこうした障害はあえてかかず、ひたすら二人の恋路が幸福に向けて突き進んでいく様子が書きたかったのだろうか、そんな考えさえ感じた。
 ひたすら温かくハッピーなロマンス小説を読みたい方にお勧め。ハッピーハッピー。