ダウト あるカトリック学校で/ジョン・パトリック・シャンリー監督
- 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
- 発売日: 2009/08/19
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ひょっとして作り手側はミステリ映画を作るつもりはなかったのかもしれない。しかし、立派なミステリ映画に仕上がっている。
ラストのひねりとそれに続くオチも、うまくない作品でやられると頭に来るものだが、この映画では決まっている。
ニューヨークにあるカトリック学校。この学校の女性校長シスター・アロイシアスが、男性聖職者たるフリン神父に疑いの目を向けた。学校唯一の黒人の生徒である少年ドナルドと、不適切な関係を持っているのでは、という疑いである。
フリン神父は、雄弁で寛容であり、大人からも子供からも人気がある。最初にこの疑惑を、校長へと持ち込んだ新人女性教師シスター・ジェイムズの悩みは、時間が経つにつれ大きなものとなっていった。
厳格極まりないシスター・アロイシアスは、頭からフリン神父が有罪だと決めつけている。思えば自分の疑いには、少なくとも物質的にはなんの証拠もないのだ。だが校長は己の決め付けを捨てるつもりはなく、フリン神父を呼び出して直接向き合うこととなる。
一体どちらが正しいのか。
陽気で魅力的で、生徒のちょっとした逸脱行為を優しく許すフリン神父なのか。
頑迷な印象すら与えるほど自分の考えに迷いなく突き進むシスター・アロイシアスなのか。
実際のところ、ラストは「おそらくこういうことだったんだろう」という回答しか見る者に与えられないのだが、ある人物のそののちの成り行きと合わせて思えると、実に皮肉な印象を受ける。
限定された舞台に、ぎりぎりまで絞られた登場人物、彼ら……ことにシスター・アロイシアスとフリン神父……台詞の応酬の緊迫感が見事な秀作だった。