水魑の如き沈むもの/三津田信三
- 作者: 三津田信三
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2009/12/07
- メディア: 単行本
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シリーズも五冊目。あまりにも「いつも通り」なおかつ「高品質」であるため、かえって感想を書くのに困るぐらいだ。ヒロインの祖父江偲はこれ以上ないほど典型的なヒロインで、相変わらず鬱陶しい。
このたび舞台となるのは、奈良の山中の村。その村には、村に豊かな水をもたらす湖に神が住んでいるとされ、しばしば儀式が行われる。神の名前は水魑。
これまでにシリーズに比べてみればおどろおどろしい雰囲気はかなり薄れており、その代わりに満州から、母の故郷である前記の奈良の山中の村へと帰り、母が亡くなったのちに二人の姉と散々貧苦に悩まされる幼い少年の生活がたっぷりと描かれる。このくだりはなかなか迫力があり、読ませるのだが、肝心の事件らしきものがなかなか起こらない。
やがて水魑に関わる儀式を執り行う神男達やその関係者達が、不可解な状況で生命を失っていく。
神や儀式に隠された本当の意味、そして殺人事件の真相は、相変わらずの水準の高さ。こういった設定の創作物に見られるお約束のオチもある。