レースリーダー/ブルノニア・バリー
- 作者: ブルノニア・バリー,池田真紀子
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2009/11/20
- メディア: 文庫
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もう一度、最初から読み直してから、頭の中を整理してから感想文を書いた方がいいのかもしれない。けれど、この不思議な、混沌とした印象を抱えている読了直後の今のうちこそ、感想文を書いてみたくて、ペンを取った(キーボードに指を置いた)
読んでいる最中、頭をよぎったのは、シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』やジョン・フランクリン バーディン『悪魔に食われろ青尾蠅』といった神秘的な作品群だった。この『レースリーダー』には前述の作品ほどの完成度はないが、精神的に危うい女性が紡ぐ、どこか病的で美しい物語として印象に残る。好きな読者、嫌いな読者がかなりはっきりと別れる類の小説で、私は好きだ。
レースの編み目を見ると、未来が読める。セーラムの名門ホイットニー家の女達の中には、時折そんなレースリーダーが現れた。ホイットニー家の歴史の女性の中でも、レースリーダーとして強い力を持つエヴァが失踪した。大おばとして強くエヴァを敬愛するタウナーは、十五年ぶりに故郷の土を踏む。十七歳の頃に、逃げ出してきた町へ。タウナーの精神は不安定で、様々な事情から欠落している記憶がある(えっ、今タウナーはなんて言ったの。誰が死んでて、誰が生きてるですって?)
だから登場人物も、読者でさえも、語り手として大きな地位を占めるタウナーを言葉を信用できない。最後に明かされる真実はかなりありふれたものだが、ここに至るまでに物語を包む曖昧な雰囲気には、はまるものは泥沼にはまるようにはまるはず。
作者はタウナーをヒロインとする二作目を執筆中というらしいが、あのオチで一体どんな風に続けるのか、大変楽しみである。
余談だが、この『レースリーダー』、最初は自費出版で刊行して、大きな出版社の目にとまり、メジャーデビューしたとのことだ。読んでいないのにこんなことを言うのは恐縮なのだが、ドラマ化もされた日本の天野節子『氷の華』に経緯が似ているようだ。
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08/01
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- 作者: ジョン・フランクリンバーディン,John Franklin Bardin,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 1999/10
- メディア: 単行本
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