FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

湖の記憶/クリスティーナ・シュワルツ

湖の記憶 (講談社文庫)

湖の記憶 (講談社文庫)

 当方が三度の飯よりも好きな、「追憶の殺人」及び「家族の秘密」が絡んだミステリだ。偶然だが、先月読んだ『波に消された記憶』とは、前記の二つの要素に付け加え、「水」のイメージも重なりあっている。
 主人公は二人いる。なにか重要な秘密を抱えつつ、死んだ妹マチルダの娘ルースを育てるアマンダ。そして、もう一人の主人公は、自分の母の死に疑惑を抱きながらも、伯母アマンダに育てられたルース。母マチルダは、一人きりで湖で溺死したということだったが、ルースは母親と一緒に溺れた記憶があるのだ。
 物語はゆっくりと、実にゆっくりと進む。そして、物語の中では幼子だったルースが、若い女性へと成長するまで時間が流れる。アマンダは、ルースが生まれる前、自分がともに暮らしていた家族のことをしきりに回想しながらも、マチルダの死の核心にはなかなか触れようとしない。
 当方はこのテーマが大好きゆえ、この独特のテンポと、ひんぱんに変わる語り手(この物語はアマンダとルース、それぞれの一人称で綴られる)も受け入れられるのだが、やや入りにくい読者もいるかもしれない。

波に消された記憶 (ヴィレッジブックス)

波に消された記憶 (ヴィレッジブックス)