氷姫 エリカ&パトリック事件簿/カミラ・レックバリ
- 作者: カミラレックバリ,Camilla L¨ackberg,原邦史朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: 文庫
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これはいい、すごくいい。
自立した颯爽たるヒロイン像に代表される現代風の魅力と、閉鎖的な人間関係を有する、小さな町で起きた殺人事件の謎解きという古典的な魅力、双方を併せ持っている。
スウェーデンの町フィエルバッカ。海辺の古い邸宅で、美しい女性の凍てついた亡骸が見つかった。被害者は、この町の名家の出身で、資産家の夫を持ちつつも、みずからもギャラリーを経営するアレクス。彼女は伝記作家エリカの少女時代の親友だった。少なくとも少女だったとき、エリカはそう思っていた。だが十代のある日、不意にアレクスは理由も告げずに引っ越し、エリカの人生から姿を消し、二人の友情は終わった。
かつての親友の過去、そしてその死になにかあると感じたエリカは、幼馴染で地元の刑事パトリックとともに謎を追う。
「北欧の作家さんが書いた女性素人探偵ものか」などと軽く考えながら読んでいたのだが、まず読みやすさでびっくりし、そして謎解きの部分でさらにびっくりした。訳者によるあとがきで、作者が手本とする作家の一人としてアガサ・クリスティが挙げられているのだが、それもよく分かる。「この人が、この動機で……」と思わず膝を打った(あまり言うと、未読の人が分かってしまうだろうか)。
最後にある登場人物にエールを送りたい。「転んだふりをしてそのセクハラ上司を殴れ、手が滑ったふりをして残り少ない頭髪を引っこ抜け」
これは久しぶりに続巻が待ち遠しいシリーズものの一作目。
女性探偵が活躍するタイプも好きな人にもお勧めなら、純粋に犯人当てが好きな人にもお勧め。