FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

遠き面影/ロバート・ゴダード

遠き面影(上) (講談社文庫)

遠き面影(上) (講談社文庫)

遠き面影(下) (講談社文庫)

遠き面影(下) (講談社文庫)

 最近の彼の作品の出来は微妙だ。『悠久の窓』と『最期の喝采』はなかなか面白かった。『眩惑されて』はオチに悪い意味でがっかりした。だから、この『遠き面影』も、色々な意味でどきどきしながら手に取った。
 結果から言うと、初期のような重厚な気品は薄れつつも、なかなか読みやすい、すっきりとしたいい作品に仕上がっている。美女とのロマンス、殺人事件、ある宝にまつわる謎、そして歴史的な悲劇……という下手をしたらチープになりかねない題材を、チープにならずに仕上げている。
 ことにうまいのが謎の美女ヘイリー。彼女の印象は出てくるたびに異なり、ヘイリーの真の正体とその意図が分かるまで、読者の頭には幾つもの「?」マークが飛び交うことだろう。ことにうまいのが、「なぜ主役の男性が、ヘイリーに見覚えがあるか」だった。このエピソードの処理は本当に良かった。
 造園業者ティムは、上司とも友人ともつかぬ関係のバーニーに頼まれ、バーニーの亡き叔父の家で行われるオークションで古い指輪を落札するため、コーンウォールへと向かう(バーニーとティムの関係は複雑だ。ティムとバーニーの妻は不倫関係にあるから)。バーニーは、オークションが行われる邸宅で家政婦ヘイリーと出会い、惹かれる。しかし、不思議なことに彼は、過去にどこかでヘイリーと出会ったような気がした。
 昔からゴダードを読んでいる読者は「薄い……」という感想を抱くかもしれないがそれでも勧められるし、それのでゴダードを読んだことはないけれど、単純に翻訳もののサスペンス小説が好きという人間にはもっと勧められる。

リオノーラの肖像 (文春文庫)

リオノーラの肖像 (文春文庫)

惜別の賦 (創元推理文庫)

惜別の賦 (創元推理文庫)

永遠(とわ)に去りぬ (創元推理文庫)

永遠(とわ)に去りぬ (創元推理文庫)

↑この辺りまでのロバート・ゴダードは本当に良かった。