まぼろしの王都/エミーリ・ロサーレス
- 作者: エミーリ・ロサーレス,木村裕美
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/08/21
- メディア: 単行本
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私事で恐縮だが、当方には大好きなお話のパターンが幾つかある。そのうちの一つが、平凡な暮らしを営む主人公の手元へ謎めいた文書(本、日記、手紙など)が届き、なにがしのメッセージや必要性を感じた主人公はその文書の謎を追う。実はその文書は、主人公が思う以上に彼、もしくは彼自身に深い関わりを持っていて……というパターンの物語だ。
この『まぼろしの王都』の、おおまかなあらすじは、上記の文章で説明できる。バルセロナな画廊経営者エミーリ・ロセル、作家とよく似た名前の男性のところへ届いたものは、『見えないまちの回想記』という十八世紀の建築家の手記だった。
好みの設定の物語だから、そこそこ面白い。新しい王都を作るため、当時の欧州を見て回る建築家の華麗な見聞録はなかなか魅惑的だ。スペインの作家が書いたということで新鮮味もある。だが美術ミステリ、歴史ミステリ好き以外には(なにせ出てくることがほとんどがその話題だから)、ちょっと勧めづらい。
ちなみに作者は、カルロス・ルイス・サフォン『風の影』の編集者でもあり、作風もどことなく似ている。
こういった設定で歴史が絡んでいる場合のお約束、「実は**は○○の子孫でした!」もあるよ。