FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

まぼろしの王都/エミーリ・ロサーレス

まぼろしの王都

まぼろしの王都

 私事で恐縮だが、当方には大好きなお話のパターンが幾つかある。そのうちの一つが、平凡な暮らしを営む主人公の手元へ謎めいた文書(本、日記、手紙など)が届き、なにがしのメッセージや必要性を感じた主人公はその文書の謎を追う。実はその文書は、主人公が思う以上に彼、もしくは彼自身に深い関わりを持っていて……というパターンの物語だ。
 この『まぼろしの王都』の、おおまかなあらすじは、上記の文章で説明できる。バルセロナな画廊経営者エミーリ・ロセル、作家とよく似た名前の男性のところへ届いたものは、『見えないまちの回想記』という十八世紀の建築家の手記だった。
 好みの設定の物語だから、そこそこ面白い。新しい王都を作るため、当時の欧州を見て回る建築家の華麗な見聞録はなかなか魅惑的だ。スペインの作家が書いたということで新鮮味もある。だが美術ミステリ、歴史ミステリ好き以外には(なにせ出てくることがほとんどがその話題だから)、ちょっと勧めづらい。
 ちなみに作者は、カルロス・ルイス・サフォン『風の影』の編集者でもあり、作風もどことなく似ている。
 こういった設定で歴史が絡んでいる場合のお約束、「実は**は○○の子孫でした!」もあるよ。